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chapter12

LastGuardian

chapter12「Secret」

"日曜日=休み"という等式は大人にないようガーディアンにもない。
かといって、"日曜日=仕事"という等式もない。
休みたい時に休む、敵が来たら応戦する。
"そんな日々の繰り返し=ガーディアン"という等式は、完璧に成り立っている。
そのいい例が、今のレドナである。

AM8:34、レドナは自室の机にノートを広げ、シャーペンを走らせていた。
無論、昨日の新たな力のテスト結果のまとめだ。
しかし、AM9:00には、レドナは自室に居なかった。
リビングで、香奈枝とフィーノとで何気ない会話をしている。

だが、今のレドナにとってはこの何気ない会話も本人にとっては仕事の一環だったりする。
いやこの際レドナでなくとも同じことを思う人は多数いるだろう。

香奈枝「う~ん、困るって言われても、もう手続き済ませちゃったし」

少しも困る様子もなく、香奈枝はただ目の前にある数枚の契約書をピラピラ振った。

レドナ「だからって、フィーノを神下中に入れるっていろんな意味で危険すぎないか?」
香奈枝「じゃあ、その理由は?」

笑顔で香奈枝が尋ねる。
しかし、レドナは冷静に例を2つ挙げた。

1つは、『武装ベランダ乾かし放置事件』である。
ガーディアンらの使う武器も、たまには掃除をしてあげないと、質が落ちる。
この点では、レドナも週1、2回、愛剣2本を丁寧に掃除している。
無論、掃除のためだけに魔法陣を張るのは危険かつ魔力の無駄なので、現実世界で武器は掃除する。
だが、フィーノは愛杖クシュリダートを洗って、そのままベランダで乾かしていた。
本人曰く『武器さんだって日光を浴びたいって思ってるはずです』である。
たまたま、ベランダを通ったレドナが気づいたからよかったものの、隣近所に見られては大事になる。
他の人には『一種のコスプレ道具です』というようレドナが説教して、この件は終えた。
この件は、学校ではしないだろうと思うが、問題は次の件だ。
『失敗時長時間謝罪』である。
ふつうに『ごめん』や『わりぃ』の一言ですみそうなことも、延々と謝罪するフィーノ。
一回夕食時、レドナの分の箸を出し忘れていたときなど、10分間も謝罪していた。
『べつに気にしない』といっても、聞く耳持たず、土下座までしだす(無論これはレドナが強制に止めた)有様だ。
これは、さすがに学校ではまずいのではないかと思う。

香奈枝「う~ん、それは少し困ったわね」
フィーノ「でも罪を犯したかぎり、謝るのは常識ですよぉ!」

苦笑交じりに言う香奈枝に、フィーノがふくれっ面で言う。
謝るのは大変良いことだと思う、しかしそれにも限度というものはあるはず――。

香奈枝「あ、でもそれは暁ちゃんが付いてたら問題ないんじゃないの?」

軽々しく、難易度高の案を挙げる。

レドナ「ちょいとまて!俺だって自由権はあるっつーの!」
香奈枝「別に可愛い女の子が隣に居て、困ることなんかしないでしょ?
    あ、それとも暁ちゃんもしかして・・・」

必死に抗議するレドナ。
香奈枝のよからぬ妄想劇が始まりかけた。

レドナ「はいはい分かりました!
    で、名前はどうすんだよ?」

なるようになる、その言葉を胸に、レドナはしかたなくその案を呑んだ。

香奈枝「一応、"鳳覇 睦月"っていう名前で出しておいたわ。
    従姉妹とか、そんな感じでいいんじゃない?」
レドナ「そんな感じって・・・・はぁ、もう好きにしてくれ」

やれやれ、と言った感じで、レドナは座っていたソファにバタンと横になった。
無気力で、両手両足はだらんと垂れている。

フィーノ「そういうことで、明日からよろしくお願いしますね!
     あ~き~ら~さん!」
レドナ「うぅ・・・よろしく、睦月」

こういう状況下で、どうすればそこまで笑顔になれるのか、レドナは不思議でしかたなかった。
本当に、フィーノと香奈枝は何処かで血が繋がっているのではないのか。
よからぬ推測を立てると、頭痛が起こりそうだった。
このことを考える度に、少し真の家にでも引越したい気分になった。

それから30分後、レドナの携帯に1通のメールが届いた。
見ると、カエデからのメールだった。
何で知ってるんだろう、と一瞬思った。
しかし、そういえば昨日テスト後に教えたなということを思い出した。

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title:時間あったら来て
from:Kaede Kinosita
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やっほーレドナ!
昨日のテストはお疲れ様~♪

ぁ、先に言っておくけど
『木下 楓』ってのはこっちの偽名
ね、本名『ハーオウム』は名乗れ
ないし(笑&汗

ってことで、昨日言い忘れてたこ
となんだけど・・・。
レドナの『イミティートの黒衣』に
は『ヒドゥン』ってのが関わってる
らしいんだよね。

それで、そのヒドゥンについて教え
たいんだけど、今日空いてる??
私は今日一日中空いてるから、時間
取れたら連絡よろしくね~
===============================

レドナ(へぇ~、アイツこっちでは"木下 楓"って名前なのか・・・)

とりあえず、カエデという名前に変わりは無いので、あまり意識しなくて大丈夫だろうと思い返信をした。

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title:1時頃
from:Akira Hoha
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こっちこそ、昨日はつき合あって
くれて、サンキューな。

ちなみに、俺は『鳳覇 暁』って名
乗ってる。
あ、言っとくけど『あかつき』っ
て呼ぶなよー!(怒

こっちも午後は空いてるから、1
時頃でいいか?
で、場所とかはどうすんだ?
===============================

実は、鳳覇 暁と言う名前は、しょっちゅう間違われる。
会う人会う人「あかつき君?」と呼ぶ。
あまり気にしていないが、少し怒りが湧いてくる。
ちなみに、真は『これ、なんて読むの?』の反応。
香澄はきちんと『あきら君』と読んだ。
そんなことを思っている間に、カエデから返事が来た。

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title:私ん家
from:Kaede Kinosita
-------------------------------
うん、分かったよ『あ・か・つ・
き』君~!♪(^-^)V

1時頃だね、りょうか~い。
場所は、私ん家でいい?
えっと『月影ウィルムマンション』
の『1501号室』だよ~。
ぁ、この前言ったけど、1人暮らし
だから、気楽な格好でOK(笑
できれば、シンとカスミとフィーノ
も連れてきて。
ロクサスには私が言っとくから。

じゃ、まったね~(´ー`)ノ
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あかつきコールに怒りを少し抱えつつも、レドナは携帯を閉じた。
ちなみに、カエデが1人暮らしなら、ロクサスはどうしているのかと言うと。
反エクステンド機関のアスティックゾーンは神下市にあるらしい。
アスティックゾーンとは、前にも言ったとおり、この世界とガーディアンの世界を繋ぐ唯一の場所だ。
どうやら、ロクサスはそこから、アナライズワールドへと戻っているらしい。
カエデは別行動で月影市に住み、神下市、月影市監視任務も背負っているらしい。

そうこうしているうちに、時はあっと言う間に過ぎていった。
そして昼食をとり、真と香澄に連絡を取って、月影市へと向かった。

香澄「私あんまりこっち側に来たことないなぁ~」

周りに聳え立つ見慣れないビルを見ながら香澄が言う。
神下大橋を渡ってすぐは、住宅地であるが、奥はかなりの都会である。
そして、カエデが住む高級マンション月影ウィルムマンションはその都会の中にある。
さすがの超高級マンション、遠くからでも茶色の建物はくっきり見える。
話によると、15階まであるらしい。
というわけで、カエデはその15階に住んでいる。
しかし、15階は1部屋しかなく、いい例えを出すと最上階にある一軒家だ。

そして、月影ウィルムマンション。
1501室の番号を打ち、インターホンで呼び出す。
OKが出て、ドアが開く。
1階からして、大理石の床が広がっている。
マンションというより、超高級ホテルのほうがいいのではないかと思う。
天上にも、豪華にシャンデリアがつけられている。

フィーノ「うわ~、カエデさんってこんな凄い所に住んでるんですね~」
真「ほんと、俺もこんな所に住みてーなぁ~」

あちこちをキョロキョロしながら、高級マンションの中を進んでいった。
実際、カエデがこのマンションに住んでいるのには理由がある。
それは、"監視"という任務ゆえだ。
監視は、一番高いところにおいておく必要がある。
つまり、オンボロアパートでも、そこが一番高いところにあれば、住居は強制的にそこになる。
このことを知っているのは、本人カエデ以外、レドナとロクサスだけだ。

ベンツの4分の3は入るエレベーターに4人は乗り、一気に15階を目指す。
15階からの風景は壮大なものだった。
風も強く吹き、手すりから身を乗り出し真下を見ると恐怖で心臓が止まりそうなほどだ。
しかしそんな中、レドナだけは、心地いい風だな、と素直に思っていた。
それは、ボサボサでツンツンしている漆黒の髪が4人の中で一番乱れているからかもしれない。
だが実際、戦闘を経験し、高速で移動し風を受けることに慣れている身では、どうしてもそう感じてしまうのだ。

驚く3人をよそに、レドナはドア横のチャイムを押した。
奥からバタバタと足音がして、ドアが開き、カエデが出てくる。
そして、4人はカエデの豪邸へと入った。

真「おじゃましまー・・・・って、広っ!!!」
香澄「す、すっごいねぇ・・・・」
フィーノ「これが・・・・高級マンション・・・ですか・・・」

3人は、あまりの部屋の広さに驚愕していた。
一方のレドナは、掃除が大変だなと、現実的な事を思っていた。

カエデ「さっ、勝手に寛いでていいよ~」

というカエデ。
その言葉に、もう甘えているロクサスは、いかにも高そうなソファに深々と座っていた。
レドナ達が入ってきたのを見て、片手を挙げて、ちーっす、と挨拶する。
軽く挨拶を交わすと、香澄とフィーノは、近くにあった小さいソファに腰を下ろした。
レドナと真は完全に言葉に甘えて、部屋内で2番目に大きいソファに2人で座った。

カエデ「で、余計な話すると"あかつき君"がブーブーうるさいから本題入ろっか」

と、鋭い目で、レドナをチラリと見た。

レドナ「状況を考えろっつーの」
カエデ「はいはい、分かったからそんな怒らない~」

ふくれっ面していうレドナを、苦笑しながらカエデがなだめた。

カエデ「んじゃ、とりあえず私達が知ってる限りヒドゥンについて全部話すね。 
    今分かってるのは3つ。
    1つは、エクステンド、反エクステンド機関、シュナイガー3面から狙われてることよ」
ロクサス「狙われてる理由は唯一つ、どの機関にもいろんな形で妨害行為をしてるんだ。
     もち、理由は一切分かんねーけど」

さすがはエース、ちゃんとけじめは付いている。
ヒドゥンに関する話になると、声も表情も真剣になる。

レドナ「今回の件みたいに、力を与えるとかそういうのは過去にあったのか?」
カエデ「ううん、たぶんレドナが初めてだと思う。
    それに、ヒドゥンに関しては、どんな状況下でも会えば殺して構わないことになってるし」
真「うわ、それって超極悪人じゃん」

苦笑しながら真が言う。

フィーノ「そういえば、私もエクステンドで訓練していた時に聞いたことあります。
     ヒドゥンっていう人物に会ったら殺せって習いました」
ロクサス「ヒドゥンが本格的に出始めたのも2年前の話だからなぁ・・・。
     たぶん、あっちの世界に行き来していない兄貴は聞いてないのも無理ないよな」

無知であったレドナをカバーするべく、ロクサスが言う。

レドナ「2年前――・・・・。
    ってことは、イクトゥーのファーストアタックがあった時と重なるな」

イクトゥーと、ヒドゥンが一枚かんでいる線が現れた。
しかし、この可能性は極めて低い。
なぜなら、

香澄「その、ヒドゥンって人もイクトゥーと関係してるのかな?」
カエデ「敵同士って意味で関係してるかもね。
    現に、レドナに力を与えて、イクトゥーを撃退させたんだし」

そう、ヒドゥンはあえてレドナに力を与えた。
その力でイクトゥーの撃退に成功させた。
まず、あれが芝居だということはまずありえない。
それは、オローズの焦り様から判断できた。

真「それじゃあ、そのヒュルイエだっけ?それの復活が目的だったとかは?」
ロクサス「おっ!その線はあるかも!」
レドナ「いや、たぶんそれも無い。
    3つの機関で狙って未だ消されていない奴だ、やろうと思えば1時間足らずでできるはず・・・」

それもそっか、と言ったように、真とロクサスはまた考え出す。

どうも、レドナには2年前の、イクトゥーのファーストアタックと重なるのが気にかかっていた。
あの時、他に何が起こったのか。
そして、何故自分に力を与えたのか。

その時、何かが起こり、その時、何かがレドナに起こった―――。
接点は、1つだけあった。

レドナ「まさか、俺がラストガーディアンに覚醒したってのが・・・・」
ロクサス「ってことは、兄貴をその前からマークしてたってことかよ」
カエデ「ありえないことはないよ。
    だって、2年前前後になったラストガーディアンはレドナ以外いなかったし・・・・。
    っ!?」

言い終えた途端、カエデがなにかを感じた。
しかし、それはレドナも感じとっていた。
巨大な魔力反応、距離からして半径1km以内。

フィーノ「ど、どうしたんですか?」
レドナ「もしかして、コイツがヒドゥンって奴か・・・?」
カエデ「たぶんね、この重い魔力の立ち込め方、間違いないっぽい」

そう言い終えた瞬間、魔法陣が展開された。
赤い魔法陣、攻撃型だ。
瞬間的に、月影市の一部を飲み込み、その一画を地球から除外する。
時は、今の時刻では無くなった。
そして、真と香澄を含む一般人も、この一画から取り除かれる。

ロクサス「あいつ、やる気満々じゃねーの?」
レドナ「とにかく面あわせとかないと、気がすまねぇ、いくぜ!」

3人は頷くと、外に出て、エレベーターに乗った。
しかし、レドナは手すりを飛び越えて、2階ずつに一度手すりに止まって、エレベーターの3倍の速度で一階まで辿り着いた。
ウィルムマンションの玄関外。
レドナが着地したそこには、お目当ての人物が白いコートを身に纏い、立っていた。

レドナ「あんたが・・・ヒドゥン!?」

ヒドゥンは何も言わず、ただフッと笑って、両手を開いた。
その手から、蒼白い光が現れ、武器の形となり、具現化する。

ヒドゥン「レドナ・・・まだお前には守るものがあるだろう?」
レドナ「な、なんだって・・・?」

答える前に、ヒドゥンはグリュンヒル・オメガをレドナに向かって振り下げた。
間一髪、地面を強く蹴ってそれを回避する。
膝に圧力をため、一気にレドナは飛び上がる。
その間、レドナの私服が光となって弾け、イミティートの黒衣が変わりに現れる。
同時に、グリュンヒル零式と、ガルティオンも具現化させる。

レドナ「答える気無しかよ・・・っ!」

着地した瞬間、グリュンヒル・キルブレイクの激しい刺突が襲った。
瞬時に、グリュンヒル零式で、それをガードする。

ヒドゥン「さよなら、レドナの右手」
レドナ「なに・・・?」

キルブレイクの漆黒の刃に刻まれた赤い紋章が光りだす。
柔らかい音が鳴り響く。
レドナの脳裏で、ウェポンクラッシュが連想された。
しかし、目の前の光景はそれを上回っていた。
自分の右腕に、亀裂が入っている――。

レドナ「う、嘘だろ・・・!?」

痛みは無い、しかし、恐怖が胸を貫く。
反射的に、ウェポンクラッシュを発動させた。
今度は、グリュンヒル零式に刻まれた赤い紋章が光る。
柔らかい音がなり、グリュンヒル・キルブレイクの刃に亀裂が入る。

瞬間、2本のグリュンヒルは、凄まじく赤黒い光を放ち、弾けとんだ。

ヒドゥン「・・・っ!!」
レドナ「ぐぁっ!」

その威力は、今まで至近距離で鍔迫り合いを行っていた2人の間に300mの距離を作った。
そして、2本のグリュンヒルの特殊効果は、互いの効果を打ち消しあっていた。
レドナの右手も、ヒドゥンのキルブレイクも無傷だった。

この光景を、楽しむかのように、ヒドゥンはフードの奥で笑っていた。
その妖笑がなにを意味するのかは、誰にもわからなかった。

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